住まいの選択には、「マンションか戸建てか」という問題で悩むことがあります。
マンションと戸建てにはそれぞれ利点と欠点がありますので、一概にどちらが良いとは言えません。
そのため、選択する際には「何を重視するか」ということによって、マンションか戸建てかの判断が異なってきます。
ここでは、マンションと戸建ての住みやすさの違いから維持費などのランニングコストの違いまで、マンションか戸建てかを選ぶ際の判断材料を包括的に説明します。
マンションのメリット・デメリット
マンションのメリットを見ていきましょう。
マンションのメリット
マンションにはいくつかメリットがあります。
まず第一に、利便性が高い物件が多いという点です。
マンションは土地面積の必要性が少ないため、駅や商業施設の周辺に多く建てられています。
そのため、駅や商業施設へのアクセスが良く、生活に便利です。
価格は条件によって異なりますが、利便性を重視する人には非常に住みやすい選択肢でしょう。
また、マンションはセキュリティ対策が手厚い点も特徴です。
オートロックや監視カメラ、常駐の管理人などがいるため、安全面での心配が少なくなります。
一方、戸建てには管理人がいないため、空き巣に狙われるリスクが増えることもあります。
間取りの観点から言えば、マンションはワンフロアになっていることが多いため、家事の動線がコンパクトになる点もメリットです。
洗濯や掃除などの家事から、小さな子供がいる場合は育児に関わることまで、全てがワンフロアで完結します。
そのため、動線をスムーズにすることができます。
そして、戸建てと比べると異なる点として、マンションでは管理費を支払う代わりに設備管理をすべて任せることができます。
例えば、エントランスの清掃やエレベーターの定期点検、ゴミ捨て場の清掃や管理なども、住人が直接行う必要がありません。
これにより、住人は自分自身でこれらの管理をしなくてもよくなり、忙しい日常生活に余裕を持つことができます。
マンションのデメリット
一番始めに挙げられるマンションのデメリットは、戸建てと比べて面積が狭いことです。
また、平均価格も戸建てよりも高く、坪単価も高いという点が、マンションのデメリットと言えます。
さらに、マンションに住むと、毎月のローン以外にも「管理費」や「修繕積立金」「駐車場代金」などがかかります。
そのため、毎月の支払額が高く感じられることがあります。
実際、平均的なマンションでは、管理費には12,480円(月)、修繕積立金には11,071円(月)かかることがわかっています。
(情報源: 東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2020年度) 」) また、マンションは集合住宅であるため、生活音やプライバシーに配慮する必要があります。
特に古いマンションでは、上下階の足音だけでなく、大きなテレビの音などが聞こえてしまうことがあります。
そのため、生活する上で注意が必要です。
最後に、マンションには管理規約というものが存在します。
この規約には、リフォームやリノベーションに関するルールが定められている可能性があります。
その内容によっては、自由にリフォームやリノベーションができない場合もありますので、事前に把握しておくことが大切です。
戸建てのメリット・デメリット
戸建のメリットを見ていきましょう。
戸建のメリット
戸建て住宅は、建物自体が独立しているので、周囲のことを心配せずに生活することができます。
これは、プライバシーを尊重して生活する上での大きな利点です。
また、マンション住まいのように上下階の騒音に悩まされることもありません。
例えば、子供やペットによる騒音を気にする必要もありません。
もちろん、完全に音が漏れないわけではありませんが、一戸建てならではの快適な暮らしを送ることができます。
また、マンションでは管理規約による制限がある場合がありますが、戸建ての場合はそのような制約はありません。
つまり、自由に建て替えやリフォームを行うことができます。
将来的に世帯人数が変化した場合や、長期的な滞在計画がある場合は、間取りを変更したり、バリアフリー設計に改造したりすることも可能です。
最後に、戸建ては近隣住人との関係構築が容易です。
戸建てが多い住宅地では、自治会やゴミ当番など、住民同士が協力し合ってより快適な環境を整えています。
そのため、誰がどこに住んでいるのかを把握しやすく、近所との関係性が密接になります。
子供の監視や近隣との交流など、温かい人間関係が戸建て住宅ならではの利点です。
中には、近隣住人と親交を深め、一緒にバーベキューなどを楽しんでいる人もいます。
戸建のデメリット
戸建て住宅にはいくつかのデメリットがあります。
まず、戸建ては2階以上のフロアからなるため、家事の動線が複雑になりやすいです。
洗濯機が1階にあり、ベランダが2階にあるため、洗濯物を運ぶのが面倒だったり、広さが広すぎて掃除が大変だったりすることがあります。
また、一般的に戸建ては駅から離れた場所に多く建てられます。
特に分譲一戸建ては開発エリアに建てられることが多いため、車やバスがないと生活するのが難しい場合もあります。
さらに、戸建ては周囲の目があるマンションと比べてセキュリティ面のリスクが高くなります。
窓や裏口に侵入対策をしないと、空き巣の被害に遭う危険性があります。
最後に、戸建てには管理費や修繕積立金などの費用負担は必要ありませんが、住宅の修繕が必要になった場合は費用が全額自己負担となります。
株式会社アットホームの調査によると、築30年以上の戸建て住宅に住んでいる人の平均修繕費用は556万円だと報告されています。
したがって、将来的に修繕が必要になる可能性を考慮し、費用の自己負担に注意する必要があります。
マンションと戸建ての特徴を比較
ここからは特徴の比較をしていきましょう。
広さ
マンションと戸建てを比較すると、一般的に戸建ての方が広いと言えます。
これは、マンションの部屋は通常1階建てであるのに対し、戸建ては2階建てや3階建てになる場合が多いためです。
戸建ては、階を重ねることでより広い生活スペースを提供することができます。
一方、マンションは一つの階に多くの住戸があるため、限られたスペースを効果的に活用する必要があります。
そのため、戸建ての方が一般的に広さにおいて優位と言えるでしょう。
日当たりと暖かさ
マンションとは異なり、戸建ては独立した住宅であるため、窓を全方位に開けることができ、光や風を取り込むことが容易です。
このため、戸建ては外気の影響をより受けやすくなります。
暑さや寒さに関して言えば、夏場は暑く、冬場は寒く感じる傾向があります。
一方で、マンションは外気と接する面は最大でも2~3面で、冬場は上下階や隣の住戸の暖房によって温かさを保つことが容易であり、逆に夏場は涼しいという特徴があります。
ただし、物件によっては異なることもありますが、日当たりや風通しの良さに関して言えば、戸建てほど実感できない場合があります。
暖かさの観点では気密性の高いマンションの方が優れている一方、日当たりに関しては、物件によっては戸建ての方が優れている場合もあります。
立地の良さ
マンションには、駅から近い立地の良い物件が多くあります。
その理由は、土地価格にあります。
駅から距離が近い立地は、自然と人が多く訪れることが予想されるため、住宅だけでなく商業施設などの需要も高くなります。
そのため、一つの土地を分割して、複数の住戸を設けるマンションの形式が適しています。
このように、マンションは立地の良い物件が多くなる傾向にあるのです。
このことから、マンションの方が戸建てよりも立地が良いと言えるのです。
設備の充実度
マンションと戸建てを設備の充実度で比較すると、両者とも基本的にはオプションで設備を追加することができるため、簡単な比較は難しいと言えます。
しかし、マンションの場合は多くの住戸があるため、スケールメリットが働きます。
そのため、ディスポーザーや宅配ボックスなど、共通の設備が最初から備わっていることが多いです。
また、マンションでは管理費を支払うことで、設備の管理を管理会社に委託することができます。
つまり、清掃や共用設備の不具合などが発生した場合でも、管理会社が対応してくれます。
一方、戸建ての場合は、自分自身で設備を導入することができます。
例えば、庭でガーデニングを楽しむための設備や、子供と一緒に遊ぶための遊具などです。
しかし、マンションでは専用庭がない場合、物理的に導入することはできません。
そのため、庭などの戸建て特有のスペースに置く設備などを除くと、設備の観点で考えると、マンションはお金を払えば充実した設備を利用することが比較的容易です。
ただし、専用庭のあるマンションでは同様に自由に設備を導入することが可能です。
セキュリティや安全面
セキュリティと安全性の観点から比較すると、マンションはオートロックや監視カメラ、管理人などを備えているため、より安全性が高いと言えます。
警視庁の統計によると、2020年の侵入窃盗の件数では、住宅の約73%が戸建て、約18%が3階以下のマンション、残りの約8%が4階建て以上のマンションでした。
この統計を見ると、戸建てと比較するとマンションのセキュリティの高さが明らかです。
もちろん、戸建ての場合でもホームセキュリティを導入することでセキュリティと安全性を確保することは可能ですが、それには追加費用がかかることを念頭に置いておきましょう。
防音性
戸建て住宅は建物が独立しているため、上階や下階の人々の騒音に悩まされることがありません。
マンションでは隣人の足音や物音が気になることがありますが、戸建てならそんな心配もありません。
その逆に、子どもやペットによる騒音を気にする必要もありません。
警視庁によると、2021年9月現在、都内で報告された騒音に関する通報は1万7000件以上にも上り、過去5年間で最も多くなったことがわかっています。
もちろん、マンションでも防音対策はされていますが、完全に騒音がないわけではありません。
外部からの騒音に悩まされたり、音を気にして生活をする必要がないという点で、戸建て住宅は優れていると言えます。
耐震性
マンションと戸建ては、どちらも建築基準法に基づいて1981年に改正されました。
この改正により、震度6強から7程度の地震でも倒壊しない建物を建てることが求められています。
そのため、地震に対して一定の耐久性を持つことができます。
しかし、建物の構造を考えると、マンションは鉄筋コンクリートで作られているため、火災に対しても強いと言われています。
この点を考慮すると、マンションは地震の揺れによる倒壊リスクだけでなく、二次的な被害としての火災などにも強いと言えるかもしれません。
つまり、マンションも戸建ても基本的には同程度の地震に耐えることができますが、火災などの観点も考慮すると、マンションの方がより地震に強いと言えるのです。
建物の寿命
国土交通省の調査によると、鉄筋コンクリート造のマンションの寿命(耐用年数)は120年以上です。
したがって、マンションは適切に管理されていれば、急激に資産価値が下がることはありません。
そのため、市場で取引される築50年のマンションも少なくありません。
一方で、木造の戸建ての場合は、建物の価値は寿命(耐用年数)である20年程度で急激に下がることが一般的です。
ただし、土地も所有している場合は土地代は残り続けますので、建物の価値がなくなってから数年後にマンションと資産価値が逆転する可能性もあります。
したがって、住むことができる期間の観点から考えると、マンションの方が戸建てよりも優れていると言えます。
売却時の流動性
まず、不動産の売りやすさは、買い手が見つかるかどうかということを指しています。
そして、買い手が見つかるかどうかは、その不動産が将来にわたって価値を持ち続けるかどうかと関連しています。
したがって、長い間価値を保つことができるマンションは、販売が容易であると言えるでしょう。
ただし、戸建て住宅の場合は、住宅としての寿命が終了しても土地の価値は残り続けます。
そのため、立地が良く土地としての価値がある場合は、マンションよりも売りやすいこともあります。
ただし、資産価値は立地や都市の開発など、さまざまな要素によって決まるため、一概には言えません。
ただし、同じ条件を仮定すると、長寿命のマンションは売りやすいと言えるでしょう。
なぜなら、将来にわたって価値を保つことができるので、買い手にとって魅力的な投資先となるからです。
したがって、不動産の売りやすさを判断するためには、その不動産の将来性や立地条件などを考慮する必要があります。
固定資産税と都市計画税の税額
固定資産税と都市計画税の税額を比較すると、一般的にはマンションの方が高くなりがちです。
その理由は、いくつかあります。
まず、マンションは戸建てに比べて減価償却期間が長いため、固定資産税の評価額が高くなることがあります。
また、戸建ては広いため、軽減措置の恩恵を受けやすいとも言えます。
固定資産税は、土地と建物を別々に評価して算出されます。
土地の評価額は、国税庁が定めた「固定資産税路線価」に税率の1.4%をかけて求めます。
一方、建物の評価額は、「再建築価格」と「経年限定補正率」をかけて算出します。
再建築価格とは、同じ建物を再建した場合にかかる建築費用となります。
経年限定補正率は、築年数が古くなるほど建物を安く評価するための補正率です。
具体的には、建物の場合、マンションは法定耐用年数が長いため、固定資産税が47年までかかる場合があります。
一方、戸建ては22年で評価額が0になることが多いです。
また、土地の場合も、戸建ての方が広いために軽減税率の恩恵を受けやすく、結果的にマンションの方が高くなりやすいのです。
修繕費
マンションと戸建てを修繕費の面から比較すると、マンションの場合は毎月管理費と修繕積立金を支払うことになります。
これによって、まとまった修繕費用が不要になります。
一方、戸建ての場合は毎月の支払いは必要ありませんが、15年に1度などの周期でまとまった修繕費用が必要になります。
もちろん、物件によって異なる場合もありますが、一般的にマンションの場合、1カ月あたりの修繕費用は約23,551円となります。
一方、戸建ての場合は約10,000円となります。
このように、修繕費用の1カ月当たりの金額を比較すると、マンションの方が高いと言えます。
光熱費
住んでいる人や家族構成によって異なりますが、一般的にマンションは建物の構造上、床面積が狭く、気密性や断熱性が高くなっています。
そのため、冷暖房効果が高くなり、光熱費も比較的抑えられる傾向があります。
一方、戸建て住宅は一般的に部屋数が多いですが、その分エアコンやトイレなどの電力消費を伴う設備も増えることになります。
そこで、光熱費を抑えるための選択肢として、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)も考えられます。
ZEHは、住宅の断熱性や省エネ性能が高くなるだけでなく、太陽光発電によってエネルギーを蓄電することも可能です。
そのため、一部の戸建て住宅では、光熱費がより抑えられる可能性もあります。
ただし、一概にマンションの方が光熱費が安いまたは戸建ての方が光熱費が安いとは言いきれません。
住まいの状況や設備によっても異なるため、具体的な条件に応じて適切な選択をする必要があります。
まとめ
この記事では、戸建てとマンションのどちらを選ぶべきかについて詳しく解説してきました。
戸建てとマンションにはそれぞれ利点や欠点がありますので、自身の優先順位に応じて住宅を選ぶ必要があります。
このため、戸建てかマンションかを考える際に重要な点は、自分の年齢、年収、世帯人数、および希望条件とどの物件が一致するかを考慮することです。
ただし、自分自身だけでピッタリの物件を見つけるのは簡単ではありません。
そのため、物件を探す場合は、自分の感覚だけに頼るのではなく、プロフェッショナルから提案を受けることが重要です。
物件ポータルサイトを見るだけでなく、不動産業者や専門家に相談することで、より適切な物件を見つけることができます。
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