準工業地域は、都市計画法によって指定された土地利用の区分の一つです。
この区分では、住宅、商業施設、オフィスビル、工場などが混在しており、特に「環境への悪影響が少なく、工業の発展を促進するために設定された地域」という位置付けです。
この記事では、準工業地域の特徴や規制、利点や欠点に焦点を当てつつ、土地利用区分の調査方法などについて詳しく説明していきます。
準工業地域とは?
準工業地域とは、都市計画法に基づいて指定されている特定の用途が割り当てられている地域のひとつです。
この地域は、住宅地、商業地、公共施設、オフィス地などが混在し、そこに軽工業の工場やサービス施設が配置されています。
そこでは、工場やそれに関連する施設を建設することができますが、同時に、安全性に問題のある工場や環境を悪化させるような施設の建設は禁止されています。
たとえば、爆発物や毒ガスを多量に扱うような危険な工場は建設が許可されていません。
法律的には、準工業地域は「環境の悪化のリスクが低い工業の機能を向上させることに主眼を置いて指定された地域」と規定されています。
この地域は、昔から続く町工場や職人の街などのイメージに近いでしょう。
準工業地域で制限されていることは?
「準工業地域」という言葉を聞くと、多くの人が工場だらけの地域をイメージするかもしれません。
実際、工場やサービス施設を建てることができる地域である一方で、住宅や商業施設なども建てることができるため、さまざまな建築物が存在しています。
ただし、建築物には制限があります。
たとえば、建ぺい率や容積率、道路車線制限、日陰規制、敷地面積の最低限度などが決められています。
さらに、高度地区や防火地域・準防火地域・法22条区域など、自治体ごとに異なる規定があります。
準工業地域では、住宅やマンション、幼稚園、小中学校、交番、病院など生活に必要な施設のほか、商業施設やレジャー施設(たとえばボーリング場、劇場)、遊技施設(たとえばパチンコ店、マージャン店)の建築が可能です。
さらに、工場、ガソリンスタンド、危険物の貯蔵・処理施設なども建設することができますが、一定の条件を満たす必要があります。
たとえば、危険性の高い工場や環境に影響を与える可能性のある工場、多量の危険物を扱う施設の建築は許可されていません。
また、キャバクラやナイトクラブは建てることができますが、個室浴場型の性風俗店は建設できません。
工業地域・工業専用地域との違い
工業地域、準工業地域、工業専用地域とは、それぞれ異なる規制が存在するエリアですね。
まずは、工業地域について詳しく説明します。
工業地域では、危険性や取り扱う物質の量に関わらず、どんな工場でも建設することができます。
また、建ぺい率や容積率、道路斜線制限、敷地最低面積などが定められていますが、日影規制はありません。
住宅や床面積が1万平方メートル以下の店舗であれば建設が可能です。
大規模な工場も建設できるため、工業の利便性が重視される地域といえます。
一方、幼稚園、小中学校、病院、ホテルなどの宿泊施設、劇場、映画館、ナイトクラブの建設は禁止または制限されています。
また、準工業地域と比べると、一般住宅よりも工場や事務所の需要が高い傾向にあります。
次に、準工業地域についてもう少し詳しくお伝えします。
準工業地域では、工業地域とは異なり、一部の施設が建設できないものがあります。
工業地域で許可されている施設でも、準工業地域では建設が制限されることがあります。
そのため、工業地域と比べると建設物に制約があるといえます。
最後に、工業専用地域についてもお話ししましょう。
工業専用地域では、住宅や飲食店、物品販売業の店舗の建設が禁止されています。
ここでは、工業の利便性が最優先されており、工場や事務所などの建設が主となります。
このように、それぞれの地域によって建築物や利用の規制が異なるので注意が必要ですね。
準工業地域に建てられる建物
準工業地域は、建物を建てる際に特に制限がないことから、様々な施設が建設されることができます。
たとえば、住宅、店舗兼事務所兼住宅、保育施設、学校、病院、福祉施設、宗教施設、図書館、診療所、公衆浴場、交番、倉庫、宿泊施設、スポーツ施設、娯楽施設、劇場、カラオケボックス、自動車教習所、駐車場、ガソリンスタンド、修理工場、一部の工場などが建設可能です。
一方、特に危険性や環境悪化の可能性が高い工場や大量の危険物を貯蔵・処理する施設などは建設が禁止されています。
このような規制によって、準工業地域は住民にとって比較的快適な生活環境を提供することができるエリアと言えるでしょう。
準工業地域のメリットは?
準工業地域の主なメリットは、以下のとおりです。
建築できる建築物の種類が多く利便性が高い
準工業地域は、様々な種類の建物が建てられることが特徴です。
住宅や飲食店、商業施設だけでなく、学校、病院、宿泊施設、レジャー施設なども建設が認められています。
この地域では、日常の生活に必要な様々な施設が集まっているため、生活が便利であると言えます。
さらに、主要な道路に近い場所に位置することが多いため、交通の利便性も高いでしょう。
実際、工場の跡地を活用してマンションなどの住宅が建設される例もよく見られます。
土地の価格は住居系の用途地域と比べると安い
準工業地域に分類される土地は、一般的に土地の価格が割安な傾向が見られます。
これは、この地域では一般的な居住地域や商業地域とは異なり、健康や環境面においてリスキーな工場などの建設が許可されるためです。
そのため、住宅や商業利用といった需要が比較的低いのです。
しかしながら、準工業地域の土地価格が安いにも関わらず、利便性は高いという特徴も持っています。
そのため、コストと利便性のバランスを重視する方や、広い土地を手に入れたい方にとっては魅力的な選択肢となることでしょう。
日照条件が良い
準工業地域の特徴は、建物の日影や斜線制限が厳しく定められていることです。
これにより、十分な日当たりを確保することができるため、住宅環境が向上します。
部屋が明るくなりやすく、洗濯物の乾きも早いという利点があります。
また、日照条件が優れていることは、不動産の売却時にアピールポイントになります。
購入者にとっても魅力的な要素となります。
さらに、日照条件の良さを強調することで、不動産の売却や賃貸運用にプラスの影響があるため、資産価値の向上にもつながります。
不動産を所有する側にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
準工業地域のデメリットは?
一方、準工業地域には以下のようなデメリットもあります。
騒音や異臭が発生しやすい
工業地域には比較的安全な工場が多くありますが、そこでも機械が稼働する際に発生する騒音や薬品の匂いなどが問題となることがあります。
また、飲食店や商業施設、レジャー施設、倉庫など、人が集まる施設が近くにある場合、工場がなくても騒音や異臭が発生する可能性が比較的高いと言えるでしょう。
土壌汚染のリスクがある
準工業地域にある工場では、危険物を扱う際に特定の規則に従う場合があります。
このような活動により、土地が汚染され、健康への危険が生じる可能性があります。
土壌汚染は外観からでは判断できないため、不動産の売買後に問題が生じる可能性があります。
したがって、準工業地域にある不動産を売却する際には、事前に土壌汚染調査を実施することが重要です。
まとめ
準工業地域とは、一般的な住宅や商業施設だけでなく、軽工業の工場やサービス施設が存在するエリアを指します。
この地域は、都市計画法に基づく12種類の用途地域の1つであり、建築物の種類が広範囲に渡り、利便性や経済性に優れています。
一般に、工業用地域としてイメージされがちな準工業地域ですが、実際には住居や店舗なども建っています。
他の用途地域に比べて建築物の種類が多様であり、学校や病院などの生活に欠かせない施設も存在しているため、利便性が高いエリアとされています。
ただし、騒音や異臭、土壌汚染といったリスクも存在するため、不動産を取引する際には慎重に検討する必要があります。
用途地域マップや各自治体の公式ウェブサイトで、該当地域がどのように指定されているか事前に確認することが重要です。